Artist

THE HOOTERS

Title

NERVOUS NIGHT

Release

1985

ジャンル

Rock

 

 

AND WE DANCED (朝までダンス)

DAY BY DAY

ALL YOU ZOMBIES

DON'T TAKE MY CAR OUT TONIGHT

NERVOUS NIGHT (眠れぬ夜)

 

HANGING ON A HEARTBEAT

WHERE DO THE CHILDREN GO (果てしなき夢)
                (featuring PATTY SMYTH)

SOUTH FERRY ROAD (南フェリー・ロード)

SHE COMES IN COLORS

BLOOD FROM A STONE

 

Produced by RICK CHERTOFF

 

 

CD入手方法

国内

1985年 (Sony→廃盤)
1988年 (Sony→廃盤)

輸入盤

※1985年 (Columbia/CK-39912)
※1994年 (Sony/4624852)
※2008年 (Sbme/723979)

 

CD裏

 

邦題は「眠れぬ夜」。(ほぼ直訳)

80s後半の日本でも人気のあった彼らのナショナルデビュー作。
新人グループといっても、70sにいくつかのバンドで失敗を重ねた、下積みの長い「苦労人集団」で、どっしりと腰が据わっている音作りだ。同郷(フィラデルフィア)のスプリングスティーンとプリンスも当時絶賛していたのを思い出す。

85年初頭のアメリカンロック界は、外国のインベーションに押され、やや停滞ムードにあった。スプリングスティーンの"Born In The USA"が一人歩きし、なかなか殻を破る傑作アルバムが出ない状態が続いていた。そんな停滞期に飛び込んできたのが、彼らだ。
 
それまでのアメロク系アーティストが使おうともしなかったマンドリン、メロディカ、バンジョー、アコーデオン等々の民族楽器を積極的かつ大胆に取り入れ、硬いロックサウンドにうまく噛みつかせたのが、最大の特徴である。
 
蛇足だが、グループ名の"HOOTERS"はメンバーが同名の人気ハンバーカー店"HOOTERS"の常連だったことからつけられたというのは真っ赤な嘘で、メロディカを製造する楽器メーカー"HOOTER"からとられた。"HOOTER"はメロディカの俗称としても使われる呼び名でもある。
 
ペンシルバニア大学在学時代から親友同士だったエリック・バジリアンとロブ・ハイマン、そしてプロデューサーのリック・チャートフは、学生のときから様々な民族楽器への好奇心と探究心を持っており、ロックへの転用の研究をしていたくらい熱心だった。現在の彼らは、楽器コレクターとしても有名だ。
 
まずは、プロデューサーとして出世していたチャートフが、83年にシンディ・ローパーのデビューアルバム"SHE'S SO UNUSUAL"を手がけた際に、エリックとロブを呼び、3人の共同作業で仕上げていった。このシンディのアルバムにも、メロディカやバンジョーが導入されているが、すべてエリックとロブの演奏である。
この時に、「この音ならいける!」と確信したのだろう、さらに新鮮かつ斬新な音作りでチャレンジした本作が、ロックファン、評論家、アーティストに至る幅広い層からも認められることになった。
 
数回聴いただけでは「無国籍」的な音の面白さにばかり気をとられがちで、普通のポップアルバムにしか感じられないかもしれない。ところが、20回、30回と重ねて聴いてみると、間違いなく根底にあるのは「フィリーソウル」を原点とする正統派アメリカンロックの血脈が必ず見えてくるはずだ。
  
評判は新たな評判を呼び、アメリカ以外の全世界に"HOOTERS"の名を馳せることに成功した。
売れたからといって、決して甘めのメロハーロックに分類することはできまい。だいいち、ラブソング自体が少ない「男くさいアルバム」で、社会現実的な内容の詩が大部分を占めているし、音の原点は紛れもなく、骨太のアメリカンロックであるからだ。
 
シングルヒットした4曲については、あえて解説する必要はないだろう。4曲とも同じ曲に聴こえないという、曲自体の個性が豊かとだけいっておこう。(なかなか出来る業ではない)
パティ・スマイスが参加したアコースティックナンバー"WHERE DO THE CHILDREN GO"は、当時問題になっていた避妊や堕胎に対してのメッセージソングで、歌詞に共感したパティから参加したいとの申し出があったそうである。
 
注目すべきは、"SHE COMES IN COLORS"。60sのサイケバンド"LOVE"のマイナーヒットのカバーである。かなりの通でなければ知る由もないマイナーな曲だ。オルガンをメロディカに入れ替えてはいるが、原曲に忠実なカバーとなっている。
ラストの"BLOOD FROM A STONE"は、すでに84年のRED ROCKERSのサードアルバム"SCHIZOPHRENIC CIRCUS"に提供済みの曲だが、彼らにとって大切な楽曲とのことで、敢えて収録したそうだ。この"BLOOD FROM A STONE"と、"ALL YOU ZOMBIES""HANGING ON A HEARTBEAT"の3曲は、83年インディー時代の前作"AMORE"で発表済みだが、ニューウエイブタッチの全く違うアレンジが施されている。聞き比べるのも面白い。
<eririn兄/2011.1.21.>