Artist

REAL LIFE

Title

HEARTLAND

Release

1983

ジャンル

ROCK, NEW WAVE

 

     

表                         裏

 

Send Me An Angel
Catch Me I'm Falling
Under The Hammer
Heartland
Breaking Point
Broken Again
Always
Openhearted
Exploding Bullets
Burning Blue

Produced by STEVE HILLAGE
(ROSS COCKLE #1)(ROSS FRASER #8)

 

 

CD入手方法

国内

アナログのみ(廃盤)

輸入盤

1990年 (ドイツ盤)→廃盤
2009年リイシュー(US盤)

 
20年近くCD化されずにお蔵入りしていた。90年に世界初のCD化されたドイツ盤には10,000円を越えるプレミアが付けられていたほどだったが、2009年にめでたくアメリカでリイシューCDが発売されている。
早くも品薄のようなので、購入は急いだほうがいいかも。

オージー産ニューウェイブとして初めて、世界的に認められた歴史的作品である。
 
83年10月頃、御茶ノ水の「CISCO」での出来事だった...錆びたモリと海のコントラストが意味深な感じのジャケ写が気になりシゲシゲと眺めていた時、「CISCO」の店長がいきなりやってきて、薦めはじめたのだ。「CISCO」が勝手に発行していた「新譜情報」を見せて、店長自らレビューを書いたんだと自慢しまくっていた。
結局、試聴もせずに買わされたが、家に帰って針を落とすと、なかなかメロディックで完成度の高いアルバムだと感じたものだ。翌年の初めには、"SEND ME AN ANGEL"がTOP40入りし、「CISCO」の店長も鼻高々で、「先見の明」を自慢しまくっていたことは言うまでもなかろう。
(この店長、確か90年代半ばに亡くなってしまったが)
最初からぶっ飛ぶようなインパクトはないが、「スルメ」的なアルバムである。今でもアナログ盤を落としたCDを車でかけている。30年近く飽きの来ない愛聴盤となった。
 
元来、オージーエリア(オーストラリアとニュージーランド周辺を合わせた総称)はイギリス人移民が半数を占めており、アメリカよりもイギリスからの音楽の流入が多いエリアでもあった。このため、70後半あたりからオージー産のパンクやニューウエイブ系バンドが生まれていた「ロック先進国」なのだ。
 
確かに、彼らが登場する直前には、メン・アット・ワークやムービング・ピクチャーズなどのオージー産のロックバンドが台頭してきたばかりだったし、同時期にINXS、ミッドナイト・オイル、ディバイナルズらもアメリカでのデビューを飾った。
 
このリアル・ライフのデビューアルバムを軽く聴いただけでは、イギリス産ニューウェイブバンドとなんら変わらないし、オリジナリティ度も低く感じるかもしれない。
じっくりと通して聴いてみると、英米ロックの長所をうまく「吸収」していると同時に、オーストラリア的な「酵素」を使って「消化」していることがわかってくる。
「酵素」とは、大自然に囲まれた「腰の強さ」と「粘り」である。
 
デビッド・ステリーの粘つくような独特のボーカル、多用される数種のシンセドラム、モヤモヤした雰囲気を醸し出す高度なシンセテクニック、スカッとエッジの効いたギターアレンジなどの個別のエッセンスをひとまとめにして、先述の「酵素」を使って、独創的な世界観を作り上げている。
 
83年当時の英米ニューウェイブは比較的軽めのものが多かったが、リアル。ライフの作り出す世界はやや「重たい」。
「重たい」ニューウェイブで知られるウルトラヴォックスやトーク・トークのマネではないものの、近い匂いはする。
「重い」もの好きのEU諸国で、まずはブレイクした理由もうなずけるというものだ。
特にドイツでは、"SEND ME AN ANGEL"がシングルチャートで堂々のbPをゲットした。

さて、収録された個性的な楽曲たちを見ていこう。
やはりまずは、"SEND ME AN ANGEL"だろう。5年後の89年にリバイバルヒットしたことからも、「何かを持っている」曲てある。非常にメロディックで耳に残る不思議な力を感じるし、細部まできめ細やかな気配りも感じる。
(この曲のヒットで「一発屋」として見られてしまうが、30年近く経った今も現役でやっているのだから、たいしたものだ。)
 
日本人好みの極上のポップセンスが光る"ALWAYS"は、初めて針を落としたとき、すぐ覚えた曲でもあった。シングルヒットした(全米40位)"CATCH ME I'M FALLING"もタイトルどおりキャッチーでポップなダンスロックである。
 

タイトル曲の"HEARTLAND""OPENHEARTED"に注目して欲しい。"HEARTLAND"はとても穏やかな雰囲気を持つ曲で、牧歌的なメロディーに惹かれてしまう。後半のハードなギターソロとシンセのコンビネーションが絶妙だ。
"OPENHEARTED"は、とにかくギターリフが耳に残る。全体的にダイナミックな作りで、オージーらしさが現れている。
2曲とも、初期のシンプル・マインズのような匂いがするのは、プロデューサーのスティーヴ・ヒレッジの影響であろうと思われる。
 
全10曲、楽曲の構成にもメリハリがあり、終わっても続けて聴きたくなる魅力あるアルバムだ。

<written by ERIRIN兄, 2011.2.4.>