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TARZAN WAS A BLUESMAN EASY RECKLESS DRIVER DANCE FEVER SAMPLE THE DOG TOO MUCH SEX, NOT ENOUGH AFFECTION WELCOME TO THE HUMAN RACE EDEN ALLEY REV.JACK & HIS ROAMIN’ CADILLAC CHURCH A SINFUL LIFE LITTLE PEOPLE MAKE BIG MISTAKES REPRISE (DON’T STOP NOW)
Produced by DENNIS HERRING
CD入手方法
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87年初頭、「フューチャー」の世界的ヒットでアッといわせた鬼才・マクドナルド夫婦(詳細バイオはアーティスト・ページを参照下さい)が、約1年半の歳月を費やしてジックリと完成させたセカンド・アルバム。セールス的には全米アルバムチャートで107位止まりと、1stを超える成功は成し得なかったが、単なるテキサス・ロックと呼ぶにはメチャメチャ中身が濃い作品で、80sアメリカン・オルタネイティヴ・ロックの最高傑作といっても過言ではないだろう。
このアルバムを最初に聴いた時、とにかくオープニングからラストまで息つく暇がないというか、彼らの醸し出す摩訶不思議な世界に完全に引きずり込まれてしまった。 そう!あのカルトドラマの傑作「ツイン・ピークス」にのめり込んだ時と同じ感覚だったといえば、ある程度は分かってもらえるかもしれない。実をいうと、この2ndの素晴らしさに出会ったことにより、あまり真剣に聴いていなかった1stを再度聴き直した。そしてライナーノーツの解説を再読して、夫婦2人きりでこの複雑かつ完成度の高い音を出しているのを再認識し、さらに感動を覚えたものだ。 2枚ともに共通していえるのが、オーソドックスな南西部らしい素朴なメロディラインを軸に、ヒップホップやユーロビートのジャンルから拝借したと思われるシンセサイザーによる実験的な味付けを施している点だ。これが彼らの真骨頂であり、聴く者に未体験の、独特な遊び心を味あわせてくれる。もし、このスタイルを取り払ってしまったら、五万とある普通のカレッジロックとなんら変わりない存在になってしまうような気がしたものだ。 実際、次作「真実の誓い」からメンバーを増やしバンドスタイルに編成変えされ、「ブーン・ボックス」の使用が極端に減ってからは、彼ららしい個性が消えてしまったと思う。
では、必殺技「ブーン・ボックス」を活用しているにも拘らず、1stと2ndの決定的な違いはどこにあるのか? 私が思うに、セカンドの方が1曲1曲がかなり熟考されて創られている点にある。とにかく創る側の主張=強い「メリハリ」があるのだ。1st自体も傑作の域にはあると思うけど、この「メリハリ」がイマイチ。 2ndでも、曲自体は70sや80s始めにパットによって書かれたブルースロックなのだが、シンセによる重い打ち込みを柱とした大胆かつ細やかな編曲が素晴らしい。 オープニングの“TARZAN WAS..”は、ハッキリ言って黒っぽい「ラップ」ナンバーだ。もしテキサスチックなブルースハープのパートが挿入されてなかったら、クラブ・ヌーボあたりの曲と勘違いしてしまうくらいだ。 そして極めつけは“RECKLESS DRIVER”。あのアーサー・ベイカー御大の手に掛かったかのような、重々しいベースラインによる打ち込みと激しいサンプリングが支配するビートロックナンバーで、どことなくニュー・オーダーを彷彿とさせる。もしこの曲がディスコでポンッとかかったとしても彼らの曲とは誰も思わないだろうが、この曲でもテキサスチックなハープとギターがきっちり主役を張っているのだ。兎にも角にもカッコよすぎる! この他にも、“TOO MUCH SEX..”、“REV.JACK..”、“LITTLE PEOPLE..”あたりも、ハープ、ギター、「ブーン・ボックス」が絶妙のコンビネーションを見せる秀作で、彼らが多大な影響を受けたというビートルズあたりのエッセンスが見え隠れするポップナンバーだ。
以上、大部分が旦那のパットのリードボーカルによるブルースナンバーだが、奥方のバーバラも“EASY”と“WELCOME TO..”の2曲でリードボーカルを取っている。どちらもメロディアスなミディアムバラードだが、特に“EASY”ではバーバラ自らの叩くパーカッションと「ブーン・ボックス」とのコンビネーションが絶妙で、最も1stアルバムの路線に近い曲かもしれない。
最後に、この摩訶不思議な「ティムバック3ワールド」をまだ体験されていない方へ...まずは「聴くべし!」です。 <written by ERIRIN兄 2003.4.15.> |