Artist

ROBBIE NEVIL

Title

ROBBIE NEVIL

Release

1986

ジャンル

ROCK, NEW WAVE,R&B

 

     

表                         裏

 

Just A Little Closer
Dominoes
Limousines
Back To You
C'est La Vie
Wot's It To Ya
Walk Your Talk
Simple Life (Mambo Luv Thang)
Neighbor's
Look Who's Alone Tonight

Produced by ALEX SADKIN

 

 

CD入手方法

国内

1987年、1990年にCD化→廃盤

輸入盤

1986年 (US盤)→廃盤
1992年リイシュー(US盤)→廃盤

 
20年近くリイシューされていない。個性的な12"リミックス音源とともに、リマスター盤の発売が待たれる。
ネット上ではかなり品薄のようだが、日本での発売当時は人気も高くかなり出回ったCDなので、ブックオフや中古店でも安値で販売している。
たまに見かけるので、根気よく探せば見つかるはずだ。


日本での洋楽人気もやや沈滞ムードが漂っていた87年初頭、彗星のごとく現れたナゾの新人、ロビー・ネヴィル。
AORオヤヂからミーハー野郎まで、幅広い層をうならせた傑作アルバムである。
 
あるAORオヤヂは言った.....「大人の聴く音楽が出てこなくなり、死に体化しているAOR界にカツを入れてくれた。これからのAORがこういう音になっていくなら、大歓迎だ。」
 
あるミーハーナンパ野郎は言った.....「こないだ渋谷のディスコで、久々にブッ飛んだ曲かかってたゼ。フランス語のタイトルだったかなぁ??音は黒かったけど、白人だってさ。」
 
日本ばかりでなく、世界レベルでこんな会話が飛び交っていたのだろうと推測される。

85年、EMIアメリカの傘下としてスタートした"Manhattan Records"。この社名どおり、ニューヨークからの最新音楽発信、そして「海外からの輸入にも」陰りが見えてきたアメリカ音楽業界を「どげんとせにゃいかん」というコンセプトで発足、80s後半にかけて、主に新人発掘に力を注いだ。
第1弾新人のカナディアンバンド/グラス・タイガーの成功で勢いづき、2弾目に送り込まれたのがロビー・ネヴィルだ。
 
85年初頭あたりからソングライター兼プログラマーとして頭角を現してきたロビー氏を、アレックス・サドキンがスカウト。
当時サドキンが「作れば売れる」と賛辞され、君臨していたプロデューサーだ。
デビューを予定していたロビー氏からも逆指名され、相思相愛の元にアルバム作りが開始されたそうだ。多忙なサドキンの手が空くのを、1年近く待っていたらしい。
 
ロビー氏の才能、サドキンの豪腕、そしてクレジットにはないがアーサー・ベイカー御大がミックスに参加、これだけのエッセンスが揃えば、傑作が出来ないはずはない。
 
ロビー氏が作り出す世界にはジャンルというものは存在しないといえる。ベースとなっているのはR&Bではあるが、ロック、ヒップホップ、ラテン、レゲエ、ジャズ、カントリー、ファンクなどなどのあらゆるエッセンスを取り込んだ「80s版ホワイト=アイド・ソウル」と呼ぶのがふさわしい。
ロビー氏の粘っこいボーカルスタイルも、「ホワイト=アイド・ソウル」にはピッタリの声質であると思う。
白人アーティストとしては珍しく、R&Bチャートでアルバムが32位、シングル"C'est La Vie"が7位を記録していることからもジャンルを越えて愛されたのがよくわかる。
 
オープニングの"Just A Little Closer"は、ロビー氏がポインター・シスターズに提供したR&Bダンスチューンのセルフカバー。ポインターの曲は、85年を代表するチャリィティ・オムニバスアルバム"U.S.A. For Africa"に収録されていた。
ポインターっぽい女性コーラスを配し、違和感のないセルフカバーとなった。
バラード以外のほぼ全曲に、同様の女性コーラスが配されているが、"C'est la Vie"のPVにも出演していたローラ・フィジーなど実力派ボーカリストが参戦した。
ローラ・フィジーは83年から86年までハイエナジー系ガールズトリオ/センターフォールドに在籍、91年にブルーノートからジャズシンガーとしてデビュー、現在も人気が高い。
 
プリンスのペイズリーパーク・レーベルの作品かと思わせるようなテクノファンクナンバー、"Limousines""Neighbor's"
も燻されたような「黒さ」がピカッと光る力作だ。
 
パワフルなダンスロックチューンの、"Dominoes""Walk Your Talk"にしても、同時期に同系のダンスロックが蔓延していたが、何段も格が違っていた。
 
AORオヤヂたちをうならせた美麗かつ叙情的なバラード、"Back To You""Look Who's Alone Tonight"の2曲は、メロディのみならず詩人としての才能にも注目だ。
特に"Back To You"は、ウェストコーストAOR界からブロック・ウォルシュが曲作りに加勢、ロビーと共作した。
ラテン系のダイナミックなナンバー"Simple Life"、シングルカットされヒットしたパワーレゲエチューン"Wot's It To Ya"の2曲もブロック・ウォルシュとロビー氏の共作である。
 
大ヒットした"C'est La Vie"は、ヒップホップ全盛の今の時代に投影しても、全く古臭さを感じないところがスゴイ。先日偶然、20歳前の取引先のヒップホップ小僧に聴かせたら、「この曲、最近の曲でしょ?」と平気で聞き返してきたくらいだ。
この曲の完成度の高さと揺るがないオリジナリティから、おそらく永久不滅の名曲として、後世にも語り継がれていくこととなるだろう。
 
<付記>
プロデュースに当たった名匠アレックス・サドキン氏だが、残念ながら、87年に38歳という若さで交通事故で他界した。サドキン氏はこの作品の後、シンプリー・レッドとブーム・クラッシュ・オペラと仕事をしていたが、本作ほどの出来栄えではなかった。サドキン氏にとって本作が「辞世作」なったといっても過言ではなかろう。

<written by ERIRIN兄, 2011.2.10.>